20240802『趣味とジェンダー 〈手づくり〉と〈自作〉の近代』という本の序章を読みました。

夏休みの課題図書

『趣味とジェンダー 〈手づくり〉と〈自作〉の近代』という本の序章を読みました。
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資格試験が終わり、ぽっかり時間ができると、自分の人生について考えてしまう。
自分の選んできた進路は「女々しい」ものを避けるという方針のもとであったのだけれど
それでも、お菓子作りや、ミシン、絵本づくりなど、自分が好きで趣味で取り組んでいる。
いわいる「女の子らしい」趣味であることにコンプレックスを感じていることも事実だ。
そんな感じで、自分が刺繍にはまったときは、「かわいい」ものづくりが嫌で、オリジナルの刺繍キットを作ることまでもした。
自分のやっていることや選択への理論的な支えが欲しいと思いこの本を手に取った。

序文を読んで興味を持った箇所

引用元は全て神野 由紀・辻 泉・飯田 豊『趣味とジェンダー 〈手づくり〉と〈自作〉の近代』(青弓社、2019年6月)より。

今田絵理香が指摘しているように、明治の少年にとっての大きな関心は文学であり、文章を書くという創作行為であった。大正後期、少年雑誌メディアが作文から工作へと読者の関心を誘導した背景には、国家的な要請のもとで優秀な技術者を育成するという目的があったことは明白である。

文系と理系、どちらかといえば理系の方が男の子らしいというイメージがあるので、大正後期まで、作文文化が少年の趣味の花形であったということが面白い。国家的な要請のもと、少女ではなく、少年に技術者になってもらおうとした背景はなんだろうと思った。

特に近代前期に手芸を行う余裕があった中・上流階級の女性たちは、(…)女性にふさわしい行為として美化していった。そして作品の芸術的な価値よりも制作過程、すなわち女性が作る行為そのものを女性特有の世界として捉え、これを女性規範としたのである。

日本語が難しくてあまり意味が拾えなかった。「乙女の嗜み」的なことでしょうか。

手作りという趣味は、性役割に沿った正当な行為であるという態度を取ることで、その意義を見出した。すなわち手作り趣味のジェンダー分化は、趣味の生成段階から当然の帰結だったといえる。

性役割に従った正当な行為であるという態度を取らなくてもいいのが現代なのに(今更良妻賢母を目指して手芸に真面目に取り組んでいる人なんているだろうか)、ジェンダー分化が解消されていない理由とはなんであるか気になった。
また、藤原麻里菜の「無駄づくり」という提案は、担い手の性別を指定しない、新たな手作りの提案であるといえるだろう。意義のないこと自体の意義を示す、無駄づくりが、手作りという趣味の生成段階にあった性役割の縛りから解放されているのが面白いと思う。
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手芸も工作も、近代初期のジェンダーを反映した、一時代前の語という印象がぬぐえないなか、多様な手作り文化を表す語が使用されるようになっているのが今日の状況である

本文中では「ハンドメイド」という言葉が紹介されていた。手芸や工作に代わる言葉として私が注目しているのは「クラフト」という言葉である。
こちらの本、パステルカラーを中心に白鳥のイラストをあしらった表紙のデザインは女子児童をターゲットにしていると推測されるが、内容はものづくりを行うだけでなく、仮説を実験を通じて調査し考察、発表することを紹介する、科学的なアプローチを身につけられるものになっている。非常に理系的な本なのである。性別を括らない「クラフト」という言葉が現代の児童に与える影響に関心を持っている。

他にもクラフトという言葉を使った女子児童がメインターゲットと思われる児童向け書籍は複数発行されている。

ここで特徴的なのは、男性の工作趣味で、戦後に至るまで女性の存在が徹底して消されているという点である。(中略)この「男のロマン」という排除の構図が戦前・戦後のミリタリーへの接近とともに一層強まっていく様子は、雑誌の記事の記事内容の分析結果からも読み取ることができる。

男のロマン」という言葉によって女性の存在が透明化される手順に興味がある。

考えたこと

序章を読んだ範囲では、「手づくり」の定義には化粧が含まれてなかったが、含んでもよいのではという仮説を立てている。
久保友香『「盛り」の誕生 女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』ではつけまつげやカラーコンタクトレンズなど生体を模倣するプラスチック成形技術を「プラスチックコスメ」と名付けている。
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化粧という身体拡張行為は、短時間でスクラップ&ビルドを繰り返す手づくり文化(せめてその延長にあるもの)といえないだろうか。

関連して思ったこと

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終わり

神野 由紀・辻 泉・飯田 豊『趣味とジェンダー 〈手づくり〉と〈自作〉の近代』(青弓社、2019年6月)、夏休みの課題図書にしてじっくり読みたい本です。
今図書館で借りて読んでいます。元値が3,300円なのですが、今入手しようとすると7,000円くらいします。購入するか悩み中。