20180409

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春の夜遊び

 毎日が寂しい。大きなショッピングセンターの中に並ぶ服の色、布の薄さばかりが春で、冷たい風とひび割れたコンクリート、それがこの町の春の全てだった。
 引っ越してきてから夜中に必ず眼を覚ますようになった。体は動かない。目を瞑り大好きだった公園への道を思い返す。生えている雑草の葉や穂の形、塗装の剥げおちた遊具の鉄の匂い、使い古したバケツとスコップのざらつき。できるだけ細かく、感じていたこと全てを同じく自分に感じさせる。木の下のシーソーに乗り、目を瞑る。またがった板は沈まずうきあがる。私を運ぶ取手飾りの馬が舞い上がり桜に飲まれていくことを思い眠る。