20240821読めるところだけ 千葉雅也『現代思想入門』を読んだ

千葉雅也『現代思想入門』の読めそうなところを読んだ。
「不完全な読書であっても読書である、というか、読書はすべて不完全なのです。」という言葉は、難しい本を読むことに難儀している人たちを暖かく見守ってくれている。

千葉雅也『現代思想入門』を購入する

自分の周りで千葉雅也『センスの哲学』の評判がいい。千葉雅也の本をなにか読んでみたいな、そしてついでに自分のことを頭がいいと思いたい、そう思っていた時に見かけた本が講談社現代新書の千葉雅也『現代思想入門』だ。本屋で見かけた。

興味を惹かれ、目次を見る。「付録 現代思想の読み方」とある。現代思想の本に限らないのだけれど、学術書など難しい本に何度も挫折してきた自分にとっていい情報が書いてあるのでは?そう思い購入を決めた。

千葉雅也『現代思想入門』読めるところを読む。

自分は難しい本を読むのは苦手だ。途中で挫折してしまうことはわかっているので、いつも目次をみて要点を掴めそうなところを見つけてそこだけ読む。
この本の目次は以下の通りだ。

はじめに 今なぜ現代思想
第一章 デリダ─概念の脱構築
第二章 ドゥルーズ─存在の脱構築
第三章 フーコー─社会の脱構築
ここまでのまとめ
第四章 現代思想の源流─ニーチェフロイトマルクス
第五章 精神分析現代思想ラカンルジャンドル
第六章 現代思想のつくり方
第七章 ポスト・ポスト構造主義
付録 現代思想の読み方
おわりに 秩序と逸脱

目次を見てこの本はありがたいなと思った。「ここまでのまとめ」が存在するからだ。途中で総集編のように内容を振り返ってくれるパートがある本が大好きだ。その章を読めばそれまでの内容をなんとなく把握することができるからだ。
自分はこの本の「はじめに」「ここまでのまとめ」「付録」「おわりに」を読んだことを持って、この本を読んだということにしよう。と決めた。

読んだところの要点のまとめ

この本ではデリダドゥルーズフーコーを主軸に現代思想について解説する。現代思想を学ぶメリットは複雑なことを単純化しないで考えられることにある。

  • ここまでのまとめ

デリダについて。「二項対立のむしろマイナスの側、劣位の側に味方できるようなロジックを考え、主張されている価値観に対抗する。そして対立の両側が互いに依存し合う、いわば『宙吊り』の状態に持ち込む。そういう論法が『二項対立の脱構築』」
ドゥルーズについて「AがBに『なる』─AがBに『似る』と言ってもいいでしょう─ような区別を横断する新たな関係性を発見すると同時に、AとBが同一にならないような、区別を横断する新たな無関係もまた発見する、というのがクリエイティブな意識」
フーコーについて「フーコーは『権力は下から来る』と言い、弱いものがむしろ支配されることを無意識に望んでしまうメカニズムを分析し、実は権力の開始点は明確ではなく、それこそドゥルーズ的な意味で、多方向の関係性(と無関係)として権力が展開しているという見方を示しました。」

読書は全て不完全。
現代思想を読むための4つのポイント
①概念の二項対立を意識する。
②固有名詞や豆知識的なものは無視して読み、必要なら後で調べる。
③「格調高い」レトリックに振り回されない。
④原典はフランス語、西洋の言語だということで、英語と似たものだとして文法構造を多少意識する。

  • おわりに 秩序と逸脱

著者が現代思想を通して格闘してきたのは、「秩序と逸脱」。本書は「秩序と逸脱」という二極のドラマとして現代思想を描き直した研究書。

この本の良かったところ

正直、「ここまでのまとめ」については実際、具体的にどういう話なのかわからなかった。現代思想を読むための4つのポイントは翻訳物ではない難しい本を読むのに活かしきれない箇所もあるだろう。
しかし、この本を(読めるところだけ)読んですごく良かったなと思う文がある。次の二文だ。

不完全な読書であっても読書である、というか、読書はすべて不完全なのです。─千葉雅也『現代思想入門』p216

自分に無理のないスピードで読書の経験を積んでいくことで、読むのは自然と早くなるのです。─千葉雅也『現代思想入門』p216

自分の読書は遅くて、自由時間も少なくて、月に何冊も本を読むことができないことに日々暴れ出したくなっている。世の中には月に何百冊も読むという人がいるらしい。でもこの本は、月に何百冊などと読むことはあり得ない、ある程度ちゃんと読むなら、人間の生物的限界があるのだと教えてくれる。
引用した二つの言葉は難しい本を読むことに難儀している人たちを暖かく見守ってくれる言葉だ。