五十嵐太郎の『現代建築に関する16章 空間、時間、そして世界』を読んだ。
この本に名前が頻出する建築家ロバート・ヴェンチューリ。その代表作『母の家』について調べてみた。
『現代建築に関する16章 空間、時間、そして世界』を読んだ感想
現代建築をめぐる16のテーマについて整理した本。
多数の建築作品・建築家を紹介しつつ、『ニューロマンサー』やロメロの『ゾンビ』『踊る大捜査線 The Movie2』などのポップカルチャー作品への言及を絡めながら論が進んでいく。
大学時代に建築を専攻していたけれど、現在は建築から離れており、学び直しをしたいという人に間違いなくおすすめできる。
16のテーマに分かれて書かれているので、登場する作品や建築家、学者の名前は様々だが、章をまたいで名前が繰り返し登場する建築家がいる。その一人がロバート・ヴェンチューリだ。
彼の他にもコルビュジェやレム・コールハース、伊東豊雄などの名前も頻出するが、彼らに比べるとヴェンチューリの知名度は一段下がるだろう。
自分もよく知らなかった建築家で、著作や作品の評価についてこの本を読んで知ることとなった。
ロバート・ヴェンチューリについて知りたくなった。調べてみて、分かったこととわからなかったことがある。
ロバート・ヴェンチューリ基本情報
ポストモダンの建築家。
モダニズム運動の旗手であるミース・ファン・デル・ローエの「less is more」に対しヴェンチューリが「less is bore」と批判したことは有名。
著作『建築の多様性と対立性』『ラスベガス』と実母のための建築作品『母の家』が有名。
ヴェンチューリは『現代建築に関する16章 空間、時間、そして世界』にどのように登場するか
この本においてヴェンチューリの名前は3か所で登場する。何について書かれた章で、どのように登場するのか振り返りたい。
第一章 形態と機能——装飾された小屋あるいは原っぱ
この章では形態と機能の関係について述べた建築家・社会学者の理論を整理している。
ヴェンチューリは直接的に形態と機能について述べているわけではないが、著者はヴェンチューリが提唱した「あひる」「装飾された小屋」という2つの建物モデルを形態と機能という視点から読み返している。
著者はヴェンチューリの「あひる」「装飾された小屋」概念の提唱は単に安易な商業施設を揶揄や新しい建築タイプの発見をしただけでなくて、モダニズムへの痛烈な批判であると分析している。
『母の家』
それでは『母の家』はどのような点がポストモダン建築として画期的だったのだろうか
『図解 世界の名作住宅
』エクスナレッジ、2018によると
母の家は建物全体に一貫した合理性を追求したモダニズム運動に、大きな疑問を投げかけた小さな家であると紹介されている。
特徴は
・古典的な切妻屋根の中央に切り込みが入っている
・近代建築を思い起こさせる水平窓
・実際の住宅の大きさより大きく見せるファサード。建物の外見が内部を反映しなくてはならないことへの問題提起
など過去の建築から「引用」したパーツを、複雑に対立させながら全体を構成した「記号の家」点だと解説されている。
わからなかったこと
『母の家』がどのように後続のモダニズムの建築家に影響を与えたのか知りたいと思った。
「引用」を寄せ集めた建築がなぜ「モダニズムへの問題を提起している」と言えるのか、モダニズムについて整理したいと思った。
また、ヴェンチューリには著名な著作『建築の多様性と対立性』『ラスベガス』がある。
この2つの著作の概要について書かれた文献を探したもののうまく見つけることができなかった。(参考になるウェブサイトはたくさんあったが)
とっ散らかってしまったが。
いろいろなウェブサイトを見て、以下のようなことが言えそうだと感じた。
以下の3点を仮説としてそれを論証するような文章を書きたいと思った。
・著書『建築の多様性と対立性』(1966)でモダニズム建築を批判し、大衆的な建築物のあり方を肯定した。
・著書『ラスベガス』(1972)で「あひる」「装飾された小屋」という二つのモデルを提唱し、「装飾された小屋」を称賛した。
・ヴェンチューリ本人の母のための家『母の家』を作り、ポストモダンの建築家に影響を与えた。